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zoom RSS フォーカルジストニア関連論文の紹介と解説です。

<<   作成日時 : 2014/10/31 16:43   >>

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グローブをによる感覚トリックがフォーカルジストニア患者の動きの協調性を向上させる。
Sensory trick phenomenon improves motor control in pianists with dystonia: prognostic value of glove-effect
Paulig J, Jabusch HC, Großbach M, Boullet L, Altenmüller E.

これは、グローブを付けて演奏することによって、ジストニア症状の改善することがあるという論文です。

【概要】
Sensory trick phenomenon とは痙性斜頚ジストニアや眼瞼痙攣、顎口蓋ジストニアの顔のある部分に触れると、症状が軽減するという現象です。
今までなぜこの現象が起こっているのかは解明されていませんでしたが、Positron Emission Tomography:PET 「陽電子放射断層撮影」を用いることによって、頭頂葉と後頭葉の機能を賦活し、運動野と体性感覚野の過剰な活動を抑制していることが明らかにされました。

薄いゴム手袋を付けた状態で演奏をすれば、この原理を音楽家のフォーカルジストニアにも応用できるのではないかという試みが考え出されていました。
今まで短期的な効果(2〜3分)は確認されていましたが、中長期的スパンでの継続調査はなされていませんでした。
今回の論文では中長期的なスパンでどのような効果があるかを調査したものです。


【仮説】
実験を開始していく前に、研究者達は臨床成果に基づく仮説を立てていました。
最初にゴム手袋をした際に症状の改善が顕著に観られるパターンの場合は、その後の治療に対してもより好い結果が導かれることが多い、というものです。


【結果】
音楽家のフォーカルジストニア患者30人(鍵盤楽器奏者:ピアノ24名、オルガン6名、ギター1名)に対して、6人(19%)にゴム手袋着用での顕著なジストニア症状の改善がみられました。
ジストニア症状の激しい被験者の方が、グローブ効果での改善が見られやすいという傾向も得られました。
仮説でも述べられているように、最初にゴム手袋をした際に症状の改善が顕著に観られるパターンの場合のが、中長期的にみてもゴム手袋によるグローブ効果が現われ易いということでした。

画像


この研究から下記の点が考察されており、私の観点からも前回のブログの内容を踏まえてまとめてみました。

●なぜグローブ効果が中長期的な効果をもたらすのか?
現段階ではグローブ効果の機序は判明していません。

ここからが前回御紹介した、B感覚入力の固定化との関連があるのではないかというのが、私の臨床を通しての現段階での仮説になります。
MIS-use がMIS-connection を引き起こして固定化されているジストニアの状態に、感覚入力+固有所容器(通常より動きにややテンションがかかった状態を作り出す)への入力をゴム手袋で作り出すことによって、いつものジストニアのパターンのスイッチ・オンを回避できるのではないかと考えます。

●19%という数字が持つ意味は何でしょうか?
私は19%という数字を低い割合だとは考えていません。
論文ではゴム手袋は治療の初めに10分間程着用して演奏しているだけで、実際には様々な治療を行っています。
当院でも現在では、鍼灸治療と筋膜リリースによる動きの再教育へのアプローチを並行して行っています。
鍼灸治療が最も効果的に反応する方、動きの再教育が効果的な方、この二つを十分に行った上で感覚入力へのアプローチを工夫しております。
そのアプローチの一つとして、ゴム手袋が位置づけられるのだと考え、19%の方がこのトレーニングで良くなっていくのであれば、大変立派な数字だと思います。

●馴化(じゅんか)に対しての対策も必要
グローブ効果が観られる方への継続したゴム手袋の着用に際しては、2点注意が必要だと考えます。

@一日の使用時間を5〜10分位とする。
論文での実験の時間が10分間であったので参考にしました。
明確な基準はありませんが、同じ刺激をずっと入れ続けるのは更なるジストニア症状を積み重ねることにもなりかねません。

A刺激への慣れに対して
やはり同じ刺激では、感覚入力や固有所容器への入力に体が慣れてきてしまう可能性があります。
例えば、指先だけテーピング、指先だけ出ている手袋、ゴム手袋など、2・3パターン用意しておくのが良いと思います。
執拗な反復練習からジストニア症状が形成されることが考えられるため、同じ刺激を伴う練習のやり過ぎには充分注意して下さい。

また、ジストニア症状の激しい被験者の方がグローブ効果での改善が見られやすいという結果も、一つの朗報になってくるのではないでしょうか。
治療を進めて行く上での前提として、家族・関係者の方々の症状への理解、治療者の包括的な支援、本人の地道な根気が必要になってきます。
地道に頑張っていきましょう。

※掲載されている写真はイメージであり論文内容と関係ありません🙇

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